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結語
末期癌患者の病状を把握しようとする時、複雑な検査ができないので、癌患者の剖検例から合併症を調べ、それを踏まえた上で病状の把握を理解しようと努め、次のような結果を得た。
a)一般に肺感染症の頻度が多いので、その発見と治療に注意が必要である。
b)心肥大・拡張は臨床的に関連のある心不全の発見と治療が呼吸困難の軽減に有効と考える。
c)前立腺癌は経過中に心筋梗塞を合併する頻度が多いので、その発見と治療に常に注意を払う必要がある。
d)頻度の多い脾炎、脾腫、肝腫大は病理学的には死亡直前に見られる変化で臨床的に問題のないものも含む。
最後に末期癌では、入院患者のみでなく訪問看護でも剖検例からわかった合併症を踏まえた上で、聴診器やハンマーなどで得られる理学的所見を中心に病状を把握する訓練が必要であると考える。
亡くなられた患者一人一人の貴重な剖検のデータをさらに分析し、末期癌の患者の苦痛の軽減に役立てたいと痛感する次第である。

 

 

 

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